前胸腺(ぜんきょうせん、英:prothoracic gland)は、昆虫の胸部にある内分泌腺。前胸腺と命名したのは田中義麿と言われている。

概要

昆虫の胸部にある内分泌腺であり、エクジソン(昆虫の脱皮・変態を誘導するステロイドホルモンの一種である脱皮ホルモン)を合成・分泌する。このエクジソンと頭部にあるアラタ体(英:corpus allatum)から分泌される幼若ホルモンが共にある場合、脱皮の際に変態は起らず、幼虫のまま大きくなる。終齢幼虫では幼若ホルモンがなくなるため、蛹へと変態する。

形態は種ごとに異なり、カイコでは第一気門付近に左右1対存在する。ショウジョウバエでは前胸腺、アラタ体、側心体細胞(英:corpora cardiaca)が融合した環状腺(英:ring gland)として脳の近辺に存在する。

エクジソンの合成はハロウィーン遺伝子と呼ばれる遺伝子群などによって行われる。エクジソンの合成遺伝子はそれぞれ別個の機構で転写調節を受けている。

エクジソンの分泌には分泌小胞とABCトランスポーターが関わっていると言われている。

ホルモンによる調節

前胸腺のエクジソン合成を促進するホルモン(前胸腺刺激ホルモン、英:Prothoracicotropic hormone: PTTH)を脳が分泌していることは古くから知られていた。1990年頃、数千万個近いカイコの頭部から片岡宏誌が石崎宏矩と鈴木昭憲の指導の下で精製作業を行い、脊椎動物の成長因子に類似したタンパク質が同定された。現在、単にPTTHというときは通常はこの分子のことを指す。PTTHの受容体はチロシンキナーゼ型受容体Torsoである。

片岡宏誌の前には長澤寛道が前胸腺刺激ホルモンの精製作業を行っていた。長澤寛道の精製したタンパク質(ボンビキシン、英:bombyxin)は、エリサンの除脳蛹には極微量でも活性があったがカイコの除脳蛹には活性が全くないことが判明したため、真の前胸腺刺激ホルモンではないと考えられたが、長澤寛道は精製を続けた。計算機での相同検索ができなかった時代であったが、長澤寛道はアミノ酸残基が5つだけ判明した時点でボンビキシンとインシュリンの相同性に文献調査から気づき、無脊椎動物初のインシュリン様遺伝子の報告としてScience誌に発表した。

今日ではPTTH以外にも多くのホルモンが前胸腺に作用することがわかっている。前胸腺におけるインシュリンのシグナル伝達機構の重要性もショウジョウバエを用いる3つのグループから2005年に報告された。

神経投射

前胸腺には中枢神経系より何本かの神経が前胸腺に接続しており、それらの役割は不明であった。2006年にFMRFアミドという低分子の神経ペプチドがこの神経により運ばれ、脱皮ホルモン合成を抑制する機構も存在することが片岡宏誌らにより報告された。

参考資料


维持胸腺活力,增强身体免疫力 知乎

胸腺体部成像的正常变异医学

增强免疫力“神药”胸腺法新,成了笑到最后的“爆款”单品? 知乎

攝護腺腫大(前列腺腫大),每天喝一杯飲料,自然療法,柏格醫生 Dr Berg YouTube

胸腺癌治疗那些事(十四) 知乎